渓谷釣りは大自然の中での釣りです。熊などの危険性は前にもお話しましたが、渓谷釣りをしていると「思わぬトラブル」が色々と発生します。せっかく楽しみに来たのにトラブルで台無しになっては勿体ないという物です。
実はトラブルの中には簡単に解決できるものも多いのですが、知らないばかりにトラブルをより、大きくしてしまうことが、よくあります。ですので、「よく有るトラブル」と「その対処法」を説明しましょう。
<目次>
- ルアーが根がかりしてしまった場合
- リールが巻きずらくなった場合
- 糸がロッドに絡まってしまっているかも
- リールが糸を巻き込んでしまっているかも
- 糸自体に「こぶ」が出来てしまっているかも
- ルアーが狙ったところに飛ばせない場合
- 川床が滑ってしまい歩きにくい場合
1.ルアーが根がかりしてしまった場合
釣りをしていて根がかりを経験しない人はいないでしょう。特に渓谷のルアーフィッシングの場合、川の中でルアーを動かすのですから根がかりは必ず起こります。
根がかりが起こった場合、まず最初にしてはならないことは「強く引っ張ること」です。えっ?と思われる方もいらっしゃるでしょう。海釣りでは根がかりした場合、強く引っ張る以外の手は無いからです。ですが渓谷釣りの場合、「川の流れ」というものがあります。川の中での根がかりは「岩に付いたコケ」や「岩のくぼみ」にルアーが引っかかり起きる事が多いのです。ですので、リールを逆回転させ糸をだらん、とさせてからロッドを上下に振ると、ルアーが水流に押され外れてくれるのです。 川で起きる根がかりの70%から80%はこの方法で解決することが出来ます。
これで解決できない場合、水没した樹木や固形物に突き刺さってしまっていることが多く、これは根がかりした場所まで行き、水中に手を突っ込んで取るしかありませんが、それは危険である場合が非常に多いです。樹木や固形物に突き刺さったルアーを水中に手を突っ込んで外すのは手をケガする可能性が高く、また水流が強い場合は例え水深が浅くても足をとられ転倒し溺れてしまう危険もあるからです。
こういった場合「とにかく強く引っ張る」ことによって糸が切れるかルアーが外れるまで引っ張ります。ただ強く引っ張った結果、ルアーが外れた場合、ルアーは凄い勢いであなたに向かって吹っ飛んできますので、それが顔などに当たらないよう、ロッドは縦ではなく横にして引っ張って下さい。
私自身も根がかりしたルアーを外そうと水中に手を突っ込んで、何とか外したもののトリプルフックの針が指に突き刺さってしまい、釣りを中止して、慌てて病院に駆け込んだ経験があります。また一緒に行っていた一人が根がかりしたルアーを外そうとして足を滑らせ流されてしまい、慌てて助けに行った経験もあります。
ルアーは一個、数百円しますので「勿体ない」と誰しもが思います。ですがケガをして病院に駆け込んだり、溺れて命を落としかねない危険を冒すより「諦めた」方が賢明な場合も多いのです。
2.リールが巻きずらくなった場合
渓流釣りでキャストしてリールを巻いていると、突然、リールが重くなり巻きずらくなることがあります。これも必ずといっていいくらいに起こることです。 そして、その原因は以下のどれかである場合がほとんどです。
糸がロッドに絡まってしまっているかも
これはロッドの先を見ることによって分かります。以下に図を示します。
上図のようにロッドに糸が絡まってしまうとリールが巻きづらくなるのです。 ロッドに糸が絡まる原因は色々ですが、「巻きづらい」と感じたら、まずロッドの先端部分が上図のようになっていないかを確認しましょう。
「絡まった場合1」の時は、単にロッドを一回、回し糸を外せば解決します。
「絡まった場合2」の時は、絡まった部分を指でつまみ、ロッドの先端まで持っていきます。そうすると「ルアーがロッドの先端リングと次のリングの間を一回転してしまっている」ことが分かります。ですので、ルアーを手繰り寄せ、糸をくぐらせることにより解決できます。
これは非常に良く起こる現象です。戻そうとしている最中に更にこんがらがってしまい手に負えないほど、ぐちゃぐちゃになることもあります。その場合は諦めて糸を切り、もう一回、最初からロッドリングに糸を通すことから、やり直しましょう。なお切った糸は必ず持って帰って捨てて下さい。糸の切りくずは環境破壊の元凶となるからです。
リールが糸を巻き込んでしまっているかも
ロッドの先端部が正常な場合はリールを見てみましょう。案外にリールの一部に糸が引っかかって止めていることがあります。また糸がリール内部に巻きこまれてしまっている場合もあります。
引っかかっている場合は、それを取れば良いのですが、巻き込んでしまっている場合はリールのドラッグ(下図の黄色矢印の部分)を回して外し、中で絡まっている糸をほぐし、外して下さい。
また何等かの理由でリールが水中に落ちてしまった場合、リール内のオイルが流されてしまい巻きずらくなることもあります。この場合、CRC-556などの潤滑剤を内部に注入すれば元に戻ります。
糸自体に「こぶ」が出来てしまっているかも
これは稀にしか起きないことですが糸の途中に「結び目のこぶ」ができてしまい、それがロッドのリングに引っかかっている場合があります。この「結び目のこぶ」を解消することは非常に大変なので諦めて、こぶのある場所で糸を切って、もう一回、糸をロッドリングに通すことから、やり直した方が良いです。
3.ルアーが狙ったところに飛ばせない場合
ルアーフィッシングを始めた最初の頃は、これに悩まされるものです。狙った場所にルアーを飛ばせない、という問題です。
この問題は「経験」ではなく「キャストの仕方」にあるのです。指で糸を押さえリールをオープンにして、ロッドを後ろに振ってから前に振ると同時に指から糸を離します。これは誰がやっても同じです。
問題は「振り方」にあるのです。ルアーフィッシングの本などではキャステイングの方法として「サイドキャスティング」「フォワードキャスティング」の2種類が紹介されていることが多いです。サイドキャスティングは「横から投げる方法」「フォワードキャスティング」は「縦に投げる方法」と説明されています。
初心者の方は簡単にできる「サイドキャスティング」を使う事が多いのですが、実はこれが問題なのです。ルアーをキャストする基本はフォワードキャスティングでありサイドキャスティングはフォワードキャスティングが出来ない場合に使う「やむを得ない方法」なのです。
人間は「何かを狙う」場合、目を基準とします。射撃を考えてみて下さい。射撃をする場合、狙ったところに当てるには目と銃の照準と的が一直線になるようにします。決して、横から適当に撃つようことはしません。
ルアーのキャスティングも同じで目を照準にして縦に狙うフォワードキャスティングで投げることがルアーを狙った場所に投げる一番、良い方法なのです。私はキャスティングする時は、まずロッドを縦に構えて両目の間に持ってきます。そして狙う場所にロッドを合わせ、そのまま、頭の真上から前に縦に振ります。こうすると、びっくりする位に「狙った場所」にキャストできます。距離の問題は経験ですが、方向の問題はフォワードキャスティングを身に付けることで解決できるのです。ただフォワードキャスティングをする場合、後ろに邪魔になるものが無いかを確認して下さい。案外に木の枝があったりします。その場合は立ち位置を変えれば良いのです。
4.川床が滑ってしまい歩きにくい場合
渓流釣りは川の中を歩いていく釣りですが、川床が滑ってしまい歩きにくいということがあります。実は川の中には「歩きやすい場所」と「歩きにくい場所」があるのです。ですので「歩きやすい場所」を選んで歩いて行けば、この問題は解決します。
しかし、夏の日などは太陽光が水面に反射して川床が見ずらいこともあります。その場合、偏光グラスというサングラスをしていると太陽光をカットしてくれるので水中が見やすくなります。よく渓谷釣りをしている人がサングラスをしていることがありますが、あれは格好だけでなく、実は水中がよく見えるようにするためにしているのです。
川床というのは以下の種類に分けられます。
① 小さい砂利のような石が集まっている場所
② 砂場になっている場所
③ 大きな岩石が一枚岩のようになっている場所
④ 大中小、様々な岩や石が混在している場所
この中で一番、歩きやすいのは①です。
また②も歩きやすいですが川床一面が砂場になっている場所に魚はいません。
一番、危ないのが③で巨大な岩石が一枚岩のように川床になっている場所は滑ることが多く、できるだけ避けるべき場所です。こういう場所で転倒して流されると命に係わることもあります。
最も一般的なのは④です。ですので、偏光グラスで水中を見ながら小さい石が砂利のように集まっている場所や砂場になっている場所だけを歩くようにすれば良いのです。また水深は浅い方が良く、流れは緩やかな方が歩きやすいのは当然です。ですので、川全体を見て「歩きやすい場所」を見極めながら行くのです。
案外に川の両側は水深が有り流れも速く、川の中心部が浅く砂利床であるということもあります。「端っこが良い」とか「真ん中は危ない」という既成概念は捨てて、自分の目で見て小さい砂利のような石が集まっている浅い場所を探しましょう。
流れが緩く底が砂や砂利の場所は多少、水深が深くても大丈夫です。逆に一枚岩のすべすべで流れが強い場所は水深10cmでも転倒して流される危険があります。
同じ川に何回か通っていると「安全な歩き道」はおのずと分かってくるものですが、最初は一歩、一歩を慎重に踏み出しましょう。滑るか、滑らないかをよく確認してから次の一歩を踏み出すのです。私も、危ない所では、たった1mの距離を十分くらいかけて慎重に回り道して渡ることもあります。慣れた川でも自然は時間とともに変化しますので万が一を考え、慎重に行動すべきなのです。時間をかけて構いません。それは決して恥ずかしいことではなく正しいことなのです。
まとめ
今回、挙げたようなトラブルは「必ず起きる」と思って下さい。実際に渓谷釣りをしていると必ず、何等かのトラブルは発生するのです。ですので、解決法、回避法を覚えおくことは、事故回避という点でも、とても重要です。
そして何よりも重要なのはトラブルが発生した時に「慌てないこと」「短気にならないこと」です。まずは落ち着くこと。 深呼吸をして肩と二の腕の力を抜くようにすると気持ちも落ち着きます。
そして次に状況をしっかり把握することです。トラブルは必ず対処できるものですが、焦ったり、短気を起こしたら、ますます解決できなくなってしまうものだからです。